近年、私達の体に様々な影響をもたらしているとして注目されるようになった腸内細菌。実は、ダイエットにも関係していることはご存知ですか?食事を制限したり、運動をしたりしてもなかなか思うように結果が出ない方は、腸に原因があるかもしれません。
腸の中には100兆個もの腸内細菌が存在します。その腸内細菌は大きく分けて善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分類されます。現代人は腸内細菌のバランスが乱れがちであり、善玉菌の量を増やす食事法が話題になることが多いですが、実はダイエットに関係するのは日和見菌です。この日和見菌の中に、通称やせ菌とデブ菌が存在していると言われています。
通称やせ菌は日和見菌の中の『バクテロイデス門(以下やせ菌)』というグループの中の菌の一つです。このやせ菌の最大の特徴は、食物繊維を消化する過程で『短鎖脂肪酸』を生み出すことです。短鎖脂肪酸は腸から吸収され、血液により全身に運ばれます。そこで脂肪細胞に働きかけ、体内への脂肪の取り込みを抑えてくれます。さらに、交感神経に働きかけ代謝を促したり、ホルモン分泌に関与して食欲を抑えたりする働きもあります。
やせ菌に対し、太りやすい方が多く持っていると言われているのが『フィルミクテス門(以下デブ菌)』通称デブ菌です。このデブ菌は、実はやせ菌と同様に日和見菌に属します。この菌が増えると、食べ物から必要以上にエネルギーを吸収するようになります。過剰なエネルギーは使いきれないため、体内に脂肪として蓄えられやすくなります。人間は長い歴史の中で飢餓に耐え抜いていた時代が多く、飢餓でも生き残ることができるようにこのような菌が存在すると考えられています。しかし、現代は飽食の時代と言われており、過剰にエネルギーを摂取している方も少なくありません。そのため、このデブ菌が活躍してしまうと太りやすくなるだけでなく、それによって生活習慣病が引き起こされる心配もあります。
やせ菌とデブ菌の理想的な割合は6:4と言われています。この2つの菌は常に勢力争いを続けており、どちらかが増えるとどちらかが減ります。この割合が変化するタイミングは大きく分けて2つあります。
お母さんのお腹の中にいる時、赤ちゃんの腸内は無菌状態です。産まれる際にお母さんから腸内細菌を受け継ぐと言われています。また、最初に触れた人の腸内細菌の影響も大きいため、赤ちゃんを取り上げた産科医も関与すると言われています。
産まれた直後と同様に大きく影響するのは、日々の食生活です。食物繊維を主体とする食事を摂っている方はやせ菌が多く、逆に食物繊維が少なく高脂肪・高カロリーの食事を摂っている方はデブ菌が多くなると言われています。
便秘や美肌だけでなく、ダイエットにも深く関わっている腸内細菌。日々のちょっとした工夫で割合を変えることができます。次回からのコラムではやせ菌とデブ菌が多い方のチェックリストや具体的な食事法をお伝えしていきます。
◆加勢田 千尋さん(管理栄養士)
腸専門の食育学校を運営する
「一般社団法人CHO-JIN食育協会」代表。
腸の専門家として、薬やサプリメントに頼らない
腸を元気にする食事法を発信している。