【SPコラム⑯】早産のリスクの低減

最近、海外の妊婦を対象にした大規模な研究で、母体のオメガ3脂肪酸が不足していると早産するリスクが高まるものの、妊娠初期からオメガ3脂肪酸を摂取することで、そのリスクは軽減できることが報告されました。赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる胎在日数が長ければ、胎盤を通してお母さんから十分な栄養をもらうことができ、大きく成長してから生まれてくることができます。脳や眼などの神経系組織が発達するのは妊娠後期で、それに合わせて神経細胞に必要なDHAやアラキドン酸の供給がぐっと高まります。早産児は、ちょうどこのお母さんの最後の大事な供給の時期を逃した未熟な状態で生まれてくることになります。

妊娠中にオメガ3脂肪酸のDHAを効率的に摂取するには、魚介類やサプリメントがおすすめです。しかし、生臭さが苦手、魚介類アレルギーがある、水銀などの化学物質が気になる、動物性食品を食べることに抵抗があるなどの方は、妊娠前の早い時期から意識してえごま油やアマニ油などの植物性のオメガ3脂肪酸を取ることをおすすめします。 魚や肉などの動物性食品から直接DHAやアラキドン酸を摂らない場合は、α-リノレン酸とリノール酸のバランスが特に重要になります。植物性油脂に含まれる多価不飽和脂肪酸のほとんどはリノール酸のため、大きくオメガ6脂肪酸に傾く可能性があるためです。

現在の自身の脂肪酸バランスはどのような状態か、血糖値のように簡単な検査キットで測定できればいいのですが、誰もが手軽に使えるような状況になるにはもう少し時間がかかりそうです。国内での開発や普及が望まれるところです。

 


◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら

*守口 先生(薬学博士)

麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長

 

 

 

 

 

*原馬 明子 先生

麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授

 

 

 

 


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【SPコラム⑮】炎症・アレルギーについて

オメガ3とオメガ6の摂取バランスが大事なのはなぜでしょうか?
それは、体内でオメガ3とオメガ6の油が真逆な働きをしているからです。例えば、下記のようなものがあります。

オメガ3 → 炎症を和らげる、血液の流れをスムーズにする
オメガ6 → 炎症を引き起こす、血液を固まりやすくする

どちらの働きも身体には必要ですが、どちらかに偏ると不具合が生じてきます。オメガ3に偏ると、出血しやすくなりますし、オメガ6に偏ると炎症反応が起こりやすく、血液の流れが悪くなります。炎症は、外部から進入した菌やウィルスなどを攻撃して身体を守るために働く防御反応で、もともと体に備わった必要な働きではありますが、オメガ6に偏っていると、オメガ6のアラキドン酸から炎症を引き起こす物質が過剰に産生され、少しの刺激やアレルゲン(アレルギーの原因になるもの)に過敏に反応して、花粉症や皮膚炎、アトピーなどの症状が出やすくなります。この炎症反応が血管で起これば、動脈硬化や脳卒中にまで繋がりかねません。
また、オメガ6に偏った食生活の母親から生まれた子どもは、炎症性疾患を引き起こしやすいアレルギー過敏な体質になり、ぜんそくや食物アレルギーを発症しやすくなる可能性もあります。

一方、オメガ3のEPAやDHAからは、炎症を抑える物質が産生されるので、オメガ6とのバランスが重要となってきます。どちらの作用にも都合のいい状態が保てるバランス比率は オメガ3:オメガ6 → 1:2~1:4と言われています。
しかし、普段の食生活から考えると、すでにオメガ6に偏った食事になっているのではないでしょうか?  調理に使う「目に見える油」の選択も大事ですが、加工食品に含まれる「目に見えない油」は「目に見える油」の4倍にもなると言われています。オメガ6を摂り過ぎない食事、積極的にオメガ3を摂取する食事を心がけ、過剰な炎症が抑えられるようにしたいですね。

 


◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら

*守口 先生(薬学博士)

麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長

 

 

 

 

 

*原馬 明子 先生

麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授

 

 

 

 


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