赤ちゃんは、胎児期にはお母さんから胎盤を介して、出生後は母乳やミルクから栄養をもらいます。この時期の脂質に関しては、オメガ3系脂肪酸のDHAとオメガ6系脂肪酸のアラキドン酸が選択的に赤ちゃんに供給されることが分かっています。
今まで、アラキドン酸は、免疫や炎症に関係する生理活性物質(エイコサノイド)が産生され、体内で過剰になるとアレルギーを亢進させる原因になるため、加工食品などに含まれる隠れ油脂のオメガ6系脂肪酸を控えるように紹介してきました。
しかし、アラキドン酸を含まない人工乳でマウスを育てると、体重の伸びが悪く小さいマウスに育ちます。
ちなみに、DHAを含まない人工乳だと脳機能が低下し、落ち着きのないマウスに育ちます。
胎児から乳幼児までの身体が急速に大きく成長・発達する時期は、脳への脂肪酸の取り込む効率が最も良い時期なので、お母さんは赤ちゃんへDHAやアラキドン酸をどんどん供給してあげなくてはなりません。どちらも体内では作れない必須脂肪酸なので、お母さんは意識して食事からとらなければいけませんね。
アラキドン酸は肉類や卵、魚介類など、動物性食品に多く含まれています。妊娠中は、食中毒や水銀などの問題からお魚を避けがちになりますが、魚介類の缶詰や干物、えごま油やアマニ油などをうまく取り入れて、オメガ3系脂肪酸の摂取を心がけてください。
お母さんの食事だけでは赤ちゃんへの供給量が足りない場合、お母さんの臓器からこれまで貯めていたDHAやアラキドン酸が奪い取られてしまうので、産後うつの予防のためにも毎日の食事による栄養管理は重要です。
◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら)
*守口 徹 先生(薬学博士)
麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長
*原馬 明子 先生
麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授
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