脳は、私たちの生命を維持する呼吸や心拍、体温調節の他に、物覚えなどの記憶や学習、楽しいや悲しい、嬉しいなどの気持ちのコントロールもしています。気持ちの受け取り方や気分の持ち方の違いはその人の性格やその場の環境にもよりますが、実は、脳内のDHAが満たされているかどうかでその感じ方が大きく異なってしまいます。
正常な喜怒哀楽のような感情の動きは、脳内でセロトニンやドーパミンなどといわれる神経伝達物質の受け渡しがスムーズにされ、過去の記憶と照らし合わせながら感じることになります。神経細胞からの伝達物質の放出には、細胞膜の柔軟性が重要です。脳内のDHAが少なくなると、細胞膜の柔軟性が下がり、これらの伝達物質がうまく放出できない、受け取れない状態となって、些細なことでもイライラしたり、落ち着きがなく不安に陥りやすくなることが、ヒトやマウスの実験でもわかってきました。
コロナ禍の環境下では、「人との接触や会話が少なくなる」、「活動範囲が制限された空間で生活する」などの閉鎖的な生活環境を強いられ気持ちのバランスを崩しがちですが、脳内のDHAが十分足りているとそのようなストレスにも柔軟に適応することが期待できます。オメガ3系脂肪酸の摂取不足が人の心の動きや性格まで変えてしまう可能性があるのは少し驚きですよね。心穏やかに生活できるように、オメガ3系脂肪酸の摂取を心がけましょう。
◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら)
*守口 徹 先生(薬学博士)
麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長
*原馬 明子 先生
麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授
※文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。